マテリアルリサイクル?サーマルリサイクル?って何? 【初めてのプラスチックリサイクル】 - 投稿記事

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マテリアルリサイクル?サーマルリサイクル?って何? 【初めてのプラスチックリサイクル】

昨今、世界的な潮流もあり、日本でも各社リサイクル事業の本格的導入が進みつつあります。
大手主要飲料メーカーでも「2030年までにグローバルで使用しているすべてのペットボトルに新たな石油由来原料を使わない」や「リサイクルペットまたはバイオマスプラなどの環境配慮素材を使用する事を目指す」など、公言しております。

「海洋プラスチックごみの海洋汚染」「ごみ処理問題」等が日本を含む世界各国で問題視されており、国内外でさまざまな施策が打ち出されています。

今回は、リサイクルの種類などについてお話しいたします。今からリサイクルに関して勉強したいリサイクル担当者になったけどリサイクルってそもそも何?といった方へのお役立ち記事です。

リサイクルを表す言葉には、その方法を表すものとリサイクル後の品質を表すものがあります。
リサイクルの方法を表す言葉は、「マテリアルリサイクル」「ケミカルリサイクル」「サーマルリサイクル」の3種類です。
そして、リサイクル後の品質を表す言葉である、「カスケードリサイクル」「水平リサイクル」についてご説明します。

⚫︎マテリアルリサイクル

回収した物から新しい物をつくり出す方法。回収したプラスチックを溶かして、新しいプラスチック製品を作るための材料をつくったり、古紙を溶解して再生パルプにするのが、これに当たります。

ちなみに、日本のプラスチックごみの20数パーセントは、この方法で他の物に生まれ変わっています。これは色々な種類のプラスチックが混ざると品質が落ちるので、家庭ごみより工場や企業などの事業ごみに適した方法です
この方法のメリットは、廃棄物を国産の資源として確保できるところにあります。日本は、ガソリンやプラスチックの原料である石油の約※199%を輸入に頼っており、石油製品を再利用することによって資源を有効活用することができます。
デメリットは、資源を集めて新しい物をつくるには、たくさんのエネルギーが必要になる事です。必ずしも環境にいいわけではないところです。

※1 経済産業省 資源エネルギー庁

⚫︎ケミカルリサイクル

廃棄物に化学的な処理を施し、他の物質に転換してから再利用することを指します。 日本で出るプラスチックごみの3〜4パーセントほどはこの方法で再利用されています。

プラスチックのケミカルリサイクルは大きく4つに分類されています。

  • 原料・モノマー化:廃プラスチックを原料やモノマーに戻して再利用
    ペットボトルをポリエステル原料に戻して、新しいボトルにつくり直すときに使われていた技術で、現在では使用済みペットボトルの確保が難しい側面もある。
    ※モノマーはここではプラスチック分子レベルでの最小単位という認識で大丈夫です。
  • 高炉原料化:廃プラスチックを高炉で還元剤として再利用
  • ガス化:廃プラスチックをガスにして化学工業で原料として再利用(二酸化炭素、水素)
  • 油化:廃プラスチックを油に戻して再利用(燃料など)

プラスチック以外だと、廃棄食用油を石鹸や、牛や豚などの家畜の糞尿からバイオガスをつくるのも、ケミカルリサイクルです。

⚫︎サーマルリサイクル

廃棄物を焼却処理した際に発生する排熱を回収し、エネルギーとして利用すること。

日本のプラスチックごみの80数パーセントは焼却され、その際に出る熱エネルギーが発電や暖房に使われています。この方法の利点は、廃棄物を燃料として使うことによって、石油燃料を節約できることです。例えば、木造の建物の廃材をチップにすればバイオマス燃料になるし、使用済みの天ぷら油からはバイオディーゼル燃料を生成できます。

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サーマルリサイクルを語るとき、必ずプラスチックごみのリサイクル問題があります。

プラスチック廃棄物の場合、純粋な原料単位での分離・分別や仕分け処理が非常に難しい。これらを単純に焼却することで排熱を利用し、発電などに有効利用するサーマルリサイクルは、日本では合理的なリサイクルと考えられています。

しかし、欧米では、廃棄物を原材料へ再生をするわけでもなく、二酸化炭素の大量排出が問題となるサーマルリサイクルは、リサイクルのかたちとは見なされていないのが実情です。

ちなみに、日本のマテリアルリサイクル率25%ほど、そのうち10数%は海外への廃棄物輸出依存によるものなので、日本の実質的なマテリアルリサイクル率は数%となっています。

あらゆるリサイクルに関して、「リサイクル元の製品を何に再生するのか」という品質的観点で整理すると、リサイクルの種類は以下の2つに大別することができます。

  • カスケードリサイクル
  • 水平リサイクル

⚫︎カスケードリサイクルとは

カスケードリサイクル図解

カスケードリサイクル(cascade=滝)とは、リサイクルすることによって元の製品の品質には戻らず、段階的に品質の低下を伴うリサイクルのことです。具体例をあげると、ペットボトルがプラスチック樹脂に戻され、衣服や食品用トレイ、ダストボックスなどにリサイクルされています。

カスケードリサイクル注目する理由

カスケードリサイクルは、環境への負荷を軽減しながら資源の効率的な活用を実現します。従来のリサイクルと異なり、廃棄物を複数の製品や材料へと連続的に再利用することで、資源の持続可能な循環を促進します。また、カスケードリサイクルは廃棄物の発生量を削減するだけでなく、原材料の調達コストや環境影響を抑えるため、経済的・環境的なメリットもあります。

カスケードリサイクルの実例

再生紙を使ったトイレットペーパー
トイレットペーパー
リサイクルしたジャケット
衣類
タイルカーペット
タイルカーペット
  • プラスチック : 使用済みプラスチックを原料として、新たなプラスチック製品や燃料、繊維として再利用されます。
  • 紙 : 使用済み紙を再生紙、断熱材として再利用する取り組みが広まっています。また、再生紙から作られた製品を使用後に再びリサイクルすることも行われています。
  • 電子機器のリサイクル : 電子機器の廃棄物から貴金属や有用な部品を回収し、新たな電子機器の製造に活用する取り組みが行われています。
  • 繊維のリサイクル : 衣料品やテキスタイルのリサイクルにより、使用済み繊維を新たな繊維製品に再利用されます。

⚫︎水平リサイクルとは

水平リサイクルとは、使用済みの製品を資源にして、再び同じ製品として利用することを言います。 カスケードリサイクルと違って、水平リサイクルであれば資源を半永久的に使用することができ、ごみの量を減らすことにも繋がります。 水平リサイクルの具体例として、
▪️ ペットボトル → ペットボトル
▪️ ビン → ビン
▪️ アルミ缶 → アルミ缶
▪️ 段ボール → 段ボール
などがあります。

水平リサイクルを注目する理由

水平リサイクルは廃棄物を他の産業や分野で再利用することに重点を置くアプローチです。これにより廃棄物が一次産業や一部の産業に限定せずに、幅広く産業資源として活用される可能性が生まれます。そのため資源の有効活用と循環経済の実現に向けて水平リサイクルが注目されています。

水平リサイクルの実例

無地のアルミ缶
アルミ缶
再生ダンボール
ダンボール
ビール瓶の再利用
ビール瓶
  • プラスチック : ブルーシート、PETボトル
  • ガラス : ビール瓶
  • 金属 : アルミ缶
  • 紙 : ダンボール、コピー紙
生産されているPETボトル

最近特に注目されているのがボトルtoボトル(ペットボトル→ペットボトル)の水平リサイクルです。 循環資源ごみの削減だけでなく、ペットボトルはほぼ単一の原料からできており、水平リサイクルしやすいという点が挙げられています。 大手飲料メーカーもペットボトルの水平リサイクルを実行するために、様々な実験や投資を行っています。現在はPETボトルの争奪戦も起きている状況です。

使用済みのペットボトルを回収し、粉砕・洗浄・再生(溶融〜ペレット化)して再生樹脂として利用する取り組みが行われており、新たなペットボトルの製造に再利用されるだけでなく、他のプラスチック製品にも活用されます。
現在では、研究開発の成果により、従来のプラスチックリサイクル技術よりも高品質な再生樹脂が得られるようになりました。またプラスチックボトルの材料や形状に制約がなくなり、多くのプラスチックボトルがボトルtoボトルリサイクルに適用可能となりました。

多くの飲料メーカーやリサイクル業者が、回収システムの構築やリサイクル施設の整備を行い、使用済みプラスチックボトルの回収と再生樹脂の製造を実現しています。 現在もさらに研究が進んでおり、より効率的なプロセスや高品質な再生樹脂の開発が行われています。また、新たな素材やバイオプラスチックの利用も検討されています。これらの取り組みによって、プラスチックボトルのリサイクル率が向上し、持続可能な資源循環が実現されることが期待されています。

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最後に、リサイクル原料を使った場合とバージン材を使った際の違い、注意点をお伝えします。
※バージン材 : 新品の素材だけで製造したもの。

  • チェックマーク 数量の安定性が無い。リサイクル原料はあくまでもメイン製品の副産物ですので、必要な時に必要な量を発注という事ができません。
  • チェックマーク 色の問題(バージン樹脂材でない場合、色々な色が混ざるため基本的には黒になる。
    黒い商品が多くなるため、人目につかない場所に利用することになる。
  • チェックマーク 物性(性能)が落ちる。熱がかかると熱履歴が増え残っていき少しづつ元の性能より劣化していく。
    ※最低でも2回はバージン材より加熱の回数が多くなる。1.溶かして再生ペレット>2.整形時に溶かす。
  • チェックマーク 外で使う材料は紫外線によって劣化する。
  • チェックマーク 再生原料を作る過程で水分が入っていたり、空気中の水分により、加水分解を起こし劣化する。
    ※水が反応物や化合物の結合を切ることによって化学的な変化を引き起こす過程の化学反応のこと表面がべたついたり、耐久性や剛性、強度などが著しく低下するなどの不具合が発生する。
  • チェックマーク リサイクル原料の場合、強化繊維(グラスファイバー等)が入ると樹脂が弱くなる。
  • チェックマーク 市場に出回った材料は異物混入(コンタミ)のリスクが高まるため、材料に合わせた異物のスクリーン(100メッシュ以上)除去が必要
    ※100メッシュ(mesh/inch)の場合は2.54cm(25.4mm)の間に100本の糸
  • チェックマーク 容器リサイクル(容リ)は有機物の匂い問題がある、再生原料や、成型した際も若干臭いが残ることがある。
  • チェックマーク 食品の分野、食品に触れる原料は用途が限られる、もし使う場合は、表面はバージン材を使うなどする。
  • チェックマーク 医療の分野では再生原料は利用できない。

リサイクル原料は上記の特徴がある為、バージン原料と組み合わせながら工夫しながら利用しないといけません。

現在リサイクルの多くはペットボトルのリサイクルで成り立っていますが、2017年の中国の一部プラスチック輸入拒否をはじめとするアジアの国々が、ペットボトル以外のプラスチック廃棄物の輸入を拒否し始めた昨今、すべてのプラスチックごみにおいてマテリアルリサイクル処理へのシフト転換が課題となっています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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