インフォメーション
information
洗浄コストを削減し、環境負荷も軽減!リサイクル現場で活躍するトロンメル式水濾過装置
もくじ
リサイクル業界の水処理課題
リサイクルは持続可能な社会の実現に欠かせない取り組みですが、解決すべき課題が多くあります。特に注目すべきは、「水処理のコスト」に関する問題です。

高額な運用コストと水資源の浪費
多くのリサイクル工程では大量の水を使う洗浄が重要なプロセスとなります。この水の使用には高い運用コストが伴います。また、洗浄後の廃水処理やフィルター交換にもコストと手間がかかることや、特に排水処理設備によるイニシャルコストで負担がさらに増大します。
洗浄設備に伴う排水の異物除去の複雑性
排水に含まれる異物の除去も課題です。異物の種類・性質によって処理が複雑になり、専用装置や操作が必要になる場合があり、特に、産業廃棄物のように多様で不規則な異物が混在する場合、効率的な処理が難しくなります。
これらの課題に対応する手段として、水の循環利用が注目※1されています。トロンメル式水濾過循環装置は、企業が抱えるコストや環境負荷の問題を解決するヒントとなるかもしれません。
※1.排水の適性処理による水資源の有効活用事例集(経済産業省 近畿経済産業局)
トロンメル式水濾過循環装置とは?



排水処理設備の負荷を低減
汚れたまま排水すると産業排水基準を満たすための処理が必要になるが、異物を除去することで処理が容易に。異物を取り除いた水を再利用することで、排水処理の負担を軽減。
効率的な異物除去
汚濁水を回転するスクリーン内に通し、回転とスクリューの動きで異物を排出。
目詰まりしにくい設計
目の細かいメッシュフィルターではなく、φ2のパンチングスクリーンを採用しており、異物が詰まりにくく、低メンテナンス性の設計
以下のようなメリットが期待できます。
排水処理の負担軽減
フィルター交換や薬剤のコストの低減
水道使用量の最適化
イニシャルコストの低減
実証と考察
トロンメル式水濾過循環装置の性能評価を目的として、異なる種類の廃棄物を用いて、処理能力、異物の分離効率を検証しました。実際の運用における有効性を確認していきたいと思います。
製品仕様 | |
---|---|
汚水処理能力 | 20㎥/hr |
撹拌用モーター | 3kW |
モーター回転数 | 1,720 rpm |
スクリーン回転数 | 16rpm~32 rpm |
スクリーン仕様 | φ2 パンチングスクリーン |
概要
以下の5種類の異物を含む汚濁水(擬似的に再現)を対象とし、スクリーン回転速度16rpm〜32rpm で水ろ過処理を実施しました。
投入材料
材料1![]() 硬質プラスチック(オレフィン系 + エンプラ混合樹脂/ 5mmスクリーン粉砕品) | 材料2![]() 軟質プラスチック(フレコン等オレフィン系樹脂/ 5mmスクリーン粉砕品) | 材料3![]() 硬質プラスチック(ABS+オレフィン系混合樹脂 / 5〜15mmスクリーン粉砕品) |
材料4![]() 軟質プラスチック(エンプラ系樹脂/ 微粉砕~15mm粉砕品) | 材料5![]() ホームセンターで購入した砂利(8mmメイン / 1mm程度の細粒含む) |
投入方法
- 材料1は投入口より材料のみを投入(上部散水無し)
- 2〜5の材料は投入口にホースで注水しながらバケツで材料を投入(擬似的に汚水の状態を再現)
実証結果および考察
材料1. 硬質プラスチック(オレフィン系 + エンプラ混合樹脂/ 5mmスクリーン粉砕品)
基本処理動作:スクリーンの回転動作と らせん状の
バッフル板により固形物残渣をスムーズに搬送・排出される。
目的:本実証は、排水処理性能の評価ではなく、装置の基本的な動作確認を目的として実施。スクリーンの回転や異物の排出メカニズムの確認と、処理対象ごとの特性を把握するための基礎データとします。
上部散水ノズル(通常)
上部散水ノズル(つまり)
運用上のポイント:微細粒子の排出管理
硬質プラスチックや砂利処理時に発生する微細粒子の流出抑制策(ノズル詰まり)として、ポンプにノズル穴径より小さなサイズのメッシュフィルターを導入することを推奨しています。
材料2. 軟質プラスチック(フレコン等オレフィン系樹脂/ 5mmスクリーン粉砕品)
結果:32rpmでは十分な搬送が行われず、スクリーンに付着して滞留。
特に、本材料はフィルム状の特性を持つため、スクリーン表面への付着が発生しやすく、さらに遠心力の影響で張り付いた状態が維持されています。
回転数を16rpmに低減すると、滞留していた異物が徐々に前進し、付着物の剥離が安定し、搬送もスムーズに行われるようになります。


運用上のポイント:回転数を下げると処理速度が低下するため、処理能力と搬送効率のバランス調整が必要。
※実証では統一した条件での比較を優先し、材料2以降は低回転で処理を実施
材料3. 硬質プラスチック(ABS混合樹脂粉砕品 / 5〜15mmスクリーン)
結果:安定した搬送・排出を確認。比重が大きくフィルム状ではないためスクリーンに付着することなく処理可能。


運用上のポイント:微細粉塵がスクリーンを通過し、貯水タンク内に堆積することを確認。そのため、タンク内の堆積物の比重による浮沈を考慮して、適宜濾過水の管理を推奨。
材料4. 軟質プラスチック(PP・PE以外 / 微粉砕~15mm)
結果:上部の散水によりスクリーンに張り付くことなくスクリュー板で押し出されるように、理想的な形で排出できます。


運用上のポイント:ろ過された汚濁水に関して、元の材料が産業廃棄物であり、粉塵・泥を多く含んでいたことから、処理後の水の濁りが急激に増加。これにより、貯水タンク内の濾過水の汚れが通常よりも早く進行するため、タンク内の堆積物管理が必要である。
材料5. 砂利(8mmメイン / 1mm程度の細粒含む)
結果:低速回転でも問題なく搬送・排出。スクリーンの詰まりや目詰まりは発生せず。


運用上のポイント:微細粉塵がスクリーンを通過し、貯水タンク内に堆積することを確認。そのため、4の材料同様に堆積物の管理が必要だが、5の材料(砂利)はほとんど浮くことがないため、主に沈殿物としての影響を考慮する必要があります。
導入するメリット
水処理コストの削減
洗浄工程で発生する汚濁水を効率的に濾過し、再利用可能な水として循環させることで、水処理の負担を軽減 できます。これにより、以下のコスト削減が可能になります。
- 排水処理の負担軽減:排水処理設備での処理負荷を低減し、処理コストの削減につながる。
- フィルター交換や薬剤コストの低減:従来の細かいフィルターを用いた濾過よりも、シンプルな構造で運用コストを抑えられる。
- 水道使用量の最適化:洗浄水を再利用することで、水道水の使用量を減らし、水道代のコスト削減にも貢献。
- イニシャルコストの低減:通常洗浄設備を導入すると水の最終的な排水のために中型〜大型の水処理設備を導入する必要があるが、トロンメル式水濾過循環装置を使用することで、水処理設備※2のサイズダウンを行うことが出来るため、イニシャルコストを抑えることが可能です。
※2.排水処理とは (株式会社 ファー・イースト・ネットワーク)
どのような企業におすすめか
トロンメル式水濾過循環装置は、水処理コスト削減と効率的なリサイクルに貢献する装置です。特に以下のような企業に適しています。
を使用する企業.jpg)
1. 大量の水(洗浄)を使用する企業
洗浄工程で大量の水を使用する企業では、水の再利用により処理コストを削減できます。
2. 既に洗浄設備を導入していて水処理コストを抑えたい企業
排水処理や水道代の負担が大きい企業にとって、処理水の再利用はコスト削減につながります。洗浄機のノズル詰まりやフィルター目詰まりを防ぎ、洗浄工程の効率向上に役立ちます。

対象例:プラスチックリサイクル工場、製造業、産業廃棄物処理業など
まとめ

今回の実証により、トロンメル式水濾過循環装置は硬質プラスチックや砂利の排出において安定した処理性能を発揮することが確認できました。
一方で、軟質プラスチックは高速回転(32rpm)では滞留が発生するため、回転数を段階的に調整し、最適値を見出すことが重要であることが分かります。
また、硬質系材料は回転数を上げても排出に問題は無く、回転数の最適化や微細粒子の排出管理を改善することで、処理可能な廃棄物の種類や規模を拡大でき、トロンメル式水濾過循環装置は今後、より幅広い分野での活躍が期待されます。